こんにちは、薬剤師のともです。
子育て中の皆さん、「うちの子、ゲームばかりして全然勉強しない……」「テレビを見る時間を減らせば、勉強時間も増えるはず!」と思ったことはありませんか?
でも、実はそれ、科学的には“正しくない”かもしれません。
今回は、テレビやゲームの時間と勉強時間の関係について、日本の大規模データを使って行われた研究をご紹介します。
そして明らかになった「本当に子どもの勉強時間を増やすには何が必要か?」をわかりやすく解説します。
この記事でわかること
- テレビ・ゲームの時間を制限すると、勉強時間は本当に増えるのか?
- 日本の大規模な追跡調査から得られたリアルなデータとは?
- 「親の関わり方」が子どもの勉強に与える影響
- 勉強しない子に効果的な声かけ・行動とは?
はじめに:「ゲームを減らせば勉強する」という誤解
多くの親御さんが「テレビやゲームは勉強の敵」と考えます。確かに、ゲームに夢中になっていると、つい宿題が後回しになることもありますよね。
でも、「テレビやゲームの時間を減らせば、そのぶん子どもは自然と勉強するようになる」……この直感的な考えに、実は科学的な落とし穴があったのです。
研究の紹介:全国5万人を対象にした追跡調査

今回ご紹介するのは、慶應義塾大学の中室牧子教授らが2013年に発表した研究(RIETI Discussion Paper Series 13-E-095)です。
この研究では、厚生労働省が実施している「21世紀出生児縦断調査」のデータ(2001年生まれの全国約5万人)を用い、小学1年〜4年生の子どもたちの「テレビ視聴時間」「ゲーム時間」「勉強時間」などを詳細に分析しました。
分析手法には、統計的な誤差や個人差を排除するために、固定効果モデルや操作変数法、Tobitモデルなど、信頼性の高い経済学的手法が使われています。
結果①:テレビ・ゲームの時間を減らしても、勉強時間は“ほとんど”増えない
研究の結論はこうです:
テレビやゲームの時間を1時間減らしても、学習時間は男子で約1.26分、女子で約1.86分しか増えない。
つまり、1時間テレビやゲームを減らしても、そのぶん丸々勉強に使われるわけではない、ということ。
さらに、
- テレビは男子には多少影響あり、女子にはほとんど影響なし
- ゲームの影響も微弱(5時間以上やって初めてわずかに影響)
要するに、「テレビやゲームを禁止しても、子どもは勉強しない」のです。

結果②:「親の関与」のほうがずっと重要
では、子どもの勉強時間を増やすには何が必要なのでしょうか?
答えは親の関わり方にあります。
研究では、親の学習への関与度(「勉強しなさい」と言う、勉強する時間を決める、一緒に見守る、終わったか確認する等)を数値化し、その影響を調べました。
もっとも効果があったのは?
- 母親:「勉強する時間を決めて守らせる」がもっとも効果的
- 父親:「子どもの勉強を見守る」がもっとも効果的
逆に、
- 母親が「勉強しなさい!」と繰り返すだけでは、特に女の子には逆効果
叱るより、見守る・支える姿勢が、勉強時間を伸ばすカギとなるのです。

実生活でどう活かせばいい?
「テレビをやめなさい」「ゲームは禁止!」と怒るよりも、親のちょっとした関わり方の工夫が子どもにとって大きな支えになります。
✅親ができる「効果的な関わり方」チェックリスト
- 📅 一緒に勉強時間を決める:タイマーやホワイトボードで「この時間は勉強」と習慣化
- 👀 見守る:そばで読書するだけでもOK。勉強している姿を見ていることが励みになる
- ✅ 終わったら確認&褒める:「ここ、きれいに書けてるね!」と具体的な評価を
- 💬 努力を認める声かけ:「集中してたね」「ちゃんとやってるね」と行動を認める
- ⏱️ 時間制限のルール化:「勉強が終わったら30分だけゲームOK」とメリハリを
子どもが「やらされている勉強」から「応援されている勉強」へと変わる、そんな関わりが理想です。
まとめ:勉強時間を増やすには、テレビやゲームより“親の姿勢”
この研究が教えてくれるのは、次のようなシンプルな事実です:
- テレビやゲームの影響は意外と小さい
- 勉強時間は「親の関わり方」で大きく変わる
「ゲームばかりしてる!」と叱る前に、まずは親自身の関わり方を見直してみるといいかもしれません。


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📚参考文献
- Nakamuro, M., Matsuoka, R., & Inui, T. (2013). More Time Spent on Television and Video Games, Less Time Spent Studying? RIETI Discussion Paper Series 13-E-095. https://www.rieti.go.jp/jp/publications/summary/13110010.html