こんにちは、薬剤師のともです。
ストレスがたまったとき、疲れたとき、落ち込んだとき——そんなとき「甘いものが欲しくなる」という人は多いのではないでしょうか。
「甘いものは心の癒し」——そんなイメージがある一方で、近年では「糖分の過剰摂取が心の健康に悪影響を及ぼす」という研究結果が続々と報告されています。
今回はその中でも特に注目すべき、イギリスの大規模研究をご紹介します。この研究では、砂糖の摂りすぎとうつ病や不安障害との関係性が詳細に検討されました。
うつや気分の落ち込みで悩む方にこそ知ってほしい「砂糖と心の関係」。科学的な視点から、わかりやすく解説します。
この記事でわかること
- 甘い食品・飲料に含まれる糖分が心の健康に与える影響
- イギリスの大規模研究が示した糖分摂取とうつ病のリスク
- 「うつだから甘いものが欲しくなる」は本当か?逆因果の可能性
- 今日からできる!心の安定につながる食生活のヒント
砂糖とうつ病の関係に迫る研究とは?

この研究は、1985年からロンドンで開始された大規模な追跡調査で、対象は35〜55歳の公務員10,308人。30年近くにわたって、健康状態・生活習慣・食事内容などが詳細に記録されてきました。
今回紹介する分析では、2002〜2013年のデータ(のべ23,245回分の観察データ)を用い、甘い食品や飲料からの糖分摂取とうつ病・不安障害(CMD:Common Mental Disorders)との関連を調査しました。
▶ 何をどう調べたのか?
- 糖分摂取量:食物頻度質問票(FFQ)で評価
- 心の健康:信頼性の高い質問票を使用(CMDはGHQ-30、うつ病はCES-D)
糖分とうつの関係性——結果はどうだった?
男性で顕著:糖分が多いほど、うつ病リスクが23%上昇!
甘いものからの糖分摂取量が最も多かった男性は、5年後にCMD(不安やうつなどの精神障害)を発症するリスクが23%も高くなることがわかりました。
この結果は、喫煙・運動・BMI・学歴などの健康や社会的要因を調整したうえでも変わりませんでした。

女性にもリスクは?
再発性うつ病(以前にうつ病を経験した人の再発)のリスクについては、男女ともに糖分摂取量が多い群で危険率が上昇しました。ただし、統計学的には有意とまでは言えない結果でした。
「うつだから甘いものを食べたくなる」は本当か?
多くの人が感じる疑問、それは「うつになると甘いものが欲しくなるのでは?」という逆因果の可能性です。
しかしこの研究では、精神障害の既往がその後の糖分摂取に影響することはなかったと結論づけられています。つまり、
「甘いものを食べすぎたから心が不安定になった」可能性の方が高い
なぜ糖分が“心”に悪いのか?考えられるメカニズム
☕ 1.血糖スパイクと気分の乱高下
砂糖を摂ると血糖値が急上昇し、一時的に気分が良くなります。しかしその後、急激に血糖が下がると、イライラや疲労感、気分の落ち込みを引き起こしやすくなります。
☕ 2.慢性炎症と脳機能の低下
過剰な糖分は全身の慢性的な炎症反応を引き起こし、それが脳の神経機能に悪影響を及ぼすと考えられています。
☕ 3.セロトニンの代謝異常
うつ病に深く関わる神経伝達物質「セロトニン」は、腸や脳内で生成されます。高糖質の食事はその代謝バランスを崩し、気分を安定させにくくする可能性があります。

今日からできる!心を整えるための糖分との付き合い方
✅ 1.「疲れた=甘いもの」の習慣をリセット
代わりに、以下のような“非糖質系のリカバリー法”を取り入れてみましょう:
- 軽いストレッチ
- 5分の目を閉じての深呼吸
- 温かいハーブティー
✅ 2.清涼飲料水や加工食品の「ラベルチェック」
「ブドウ糖果糖液糖」「異性化糖」などの表記がある食品・飲料は避け、無糖や自然派のものに置き換えましょう。
✅ 3.果物や乳製品から“自然な甘さ”を
果物やヨーグルトなどの天然の甘味+栄養素を含む食品を選ぶことで、気分の安定と健康的な習慣の両方を得られます。
まとめ|「甘いもの=癒し」が心の不調を生むパラドックス
砂糖は私たちに一時的な快楽や安心感を与えてくれますが、それは持続しません。今回の研究結果は、「甘いものは心にいい」と思われがちな常識に一石を投じるものでした。
「ちょっと最近気分が沈みがち…」と思ったら、甘いものを減らしてみる。そんな小さな一歩が、心の健康を守る大きな一歩になるかもしれません。

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📚参考文献
- Knüppel A, Shipley MJ, Llewellyn CH, Brunner EJ. Sugar intake from sweet food and beverages, common mental disorder and depression: prospective findings from the Whitehall II study. Sci Rep. 2017;7:6287. https://doi.org/10.1038/s41598-017-05649-7