梅雨にうつは悪化する?研究結果と体のだるさを軽減する市販薬について解説

健康の科学

こんにちは、薬剤師ともです。
「梅雨の時期になると、なんだか気分が落ち込む」「やる気が出ない」「朝起きるのがつらい」。
そんな声をよく耳にしませんか?
実際に、梅雨(6月~7月)は日本の中でも特に心身の不調を感じる人が増える季節です。
高湿度・低気圧・曇天・日照不足といった気象条件が重なり、自律神経が乱れやすくなります。

民間調査では「梅雨に気分が落ち込む」と答えた人は約35%、特に女性の割合が高いと報告されています(ポーラ調査2023年)。

こうした気象ストレスが、うつ病や不安障害、または「季節性情動障害(SAD)」のような症状を引き起こすことがあるのです。
今回の記事では、そんな気象病ともいえる梅雨がひきおこす気分の変動とその対策について解説します。

このブログ記事を読む4つのメリット

  • 梅雨や天候不順がメンタルに与える影響について、最新の研究結果がわかる
  • 季節性情動障害(SAD)との違いや、科学的な背景が理解できる
  • 気分の落ち込みを防ぐための具体的な対策法を知ることができる
  • 気候による体のだるさなどに効く市販薬を薬剤師の視点から学べる

科学的にみた「梅雨うつ」の正体

気象とうつ症状の関係は?

国内外の研究を通じて、「気象とメンタルヘルスの関係」は確かに示唆されています。
ただし「梅雨だからうつになる」と単純には言い切れません。要点は次の通りです:

  • 英国やリトアニアの研究では、日照時間の減少や気温の低下、気圧の変動がうつ症状と関連していました。
  • 日本の研究では、梅雨時に体調不良を訴える人は多いが、SAD(季節性情動障害)の発症率自体は1〜3%程度と比較的低いとされています。

つまり「梅雨がつらい」と感じる人は確かに多いが、すべてが医学的な「うつ病」や「SAD」と一致するわけではありません。

なぜ梅雨がつらく感じるのか?

  • 日照不足によるセロトニンの減少
  • 低気圧が交感神経の活動を低下させ、だるさや無気力感を増加
  • 湿度による不快感が、睡眠や活動意欲に影響

こうした複数の要因が重なることで、心と体のバランスが崩れやすくなるのです。


季節性情動障害(SAD)とは何か?

SAD(Seasonal Affective Disorder)は、季節の変化に伴ってうつ症状が繰り返し現れる精神疾患です。

SADの特徴

  • 秋から冬にかけて気分が落ち込む(冬季うつ)
  • 過眠、過食(特に炭水化物への欲求)、体重増加などが現れる
  • 春から夏になると自然に回復する

SADと梅雨は違う?

SADは典型的には冬に起こりますが、一部には「夏季SAD(夏のうつ)」や「梅雨時のうつ症状」も存在すると報告されています。
特に日本では、梅雨の湿度と日照不足が体調・気分に大きく影響を与えていると考えられています。


科学が示す「梅雨うつ」対策ベスト4

1. 光療法(ブライトライトセラピー)

光療法は、SADの治療にも使われる医学的手法で、日照不足によるセロトニン不足を補います。

  • 10,000ルクス程度の明るさの光を朝に30分〜1時間浴びる
  • メタ解析によれば、非季節性うつにも効果があるとされています(Lam et al., 2016)
  • 副作用が少なく、安全に試せる

2. 運動習慣の継続

運動はうつ・不安障害においても治療効果が認められています。

  • ウォーキング、ヨガ、軽い筋トレなどでOK
  • 週3回以上の有酸素運動で、気分の安定効果
  • 運動はセロトニン、エンドルフィンの分泌を促進

3. 睡眠の質を整える

  • 就寝・起床時間を一定にする
  • 寝る前のスマホや照明を控える
  • 寝室環境(除湿・暗さ・静けさ)を最適化する

慢性的な睡眠不足は、抑うつ・不安症状のリスクを高める要因です。

4. 生活リズムの維持とストレスケア

  • 起床後すぐにカーテンを開けて光を浴びる
  • 朝食をとる、簡単な家事や散歩で身体を動かす
  • 気圧・湿度の変化に影響されすぎないように、1日の流れを安定させる
  • 趣味や人との交流も重要な「心の栄養」になります

梅雨の体調不良に対応しうる代表的な市販薬

上記の他に薬に頼るという方法もあります。
以下に紹介する薬は市販薬としてドラッグストアなどでお買い求めできます。

鎮痛薬(気圧変化による頭痛に)

  • 商品名例:イブA錠、ロキソニンS、バファリンプレミアム
  • 【有効成分】イブプロフェン、ロキソプロフェンなど
  • 【効果】気圧変化によって起こる片頭痛・緊張型頭痛に対応
  • 【注意点】慢性的に服用するのは避け、頻度が高い人は医師相談を

乗り物酔い薬(めまい・耳の違和感に)

  • 商品名例:トラベルミン、アネロンニスキャップ
  • 【有効成分】ジフェンヒドラミン、スコポラミンなど
  • 【効果】内耳の自律神経バランスを整え、めまい・吐き気を軽減
  • 【注意点】眠気の副作用が強い製品も多いため、就寝前の服用推奨

自律神経調整系(精神的不安、肩こりなどに)

  • 商品名例:柴胡加竜骨牡蛎湯(ツムラ62・クラシエ漢方)、加味逍遙散(クラシエ)
  • 【分類】漢方薬
  • 【効果】イライラ、不安感、肩こり、動悸、不眠などの自律神経症状に適応
  • 【特徴】柴胡加竜骨牡蛎湯 → イライラと不安感が入り混じるタイプに
         加味逍遙散 → 更年期やホルモン影響が疑われる女性向けに有効

    最近の研究では、五苓散が気圧変化による頭痛などに効果が高いという結果が出ました。
    次回の記事で詳しく解説します。

睡眠改善薬(眠れないときに)

  • 商品名例:ドリエル、ネオデイなど
  • 【有効成分】ジフェンヒドラミン
  • 【効果】一時的な入眠困難の緩和
  • 【注意点】根本原因を改善するものではない。連用NG。

❗ 注意点

  • 本格的なうつ病・不安障害の治療は医療機関での診断と処方薬が基本です。市販薬はあくまで補助的な対処にすぎません。
  • 2週間以上つらさが続く/生活に支障がある/涙が止まらないなどがある場合は、自己判断せず精神科や心療内科へ
  • 市販薬は体質により合う・合わないが大きいため、できれば薬剤師に直接相談してから選ぶのが安心です。

心がつらい時、どうすればいい?

「気持ちが落ち込んで、何もしたくない」「朝起きるのもつらい」。
そんなとき、自分を責めないでください。

気象がもたらす気分の波は“あなただけ”のせいではありません。

薬剤師からアドバイス

  • 市販薬やサプリでは補えない「本格的なうつ」の可能性もあるため、症状が2週間以上続く場合は医療機関を受診しましょう
  • 無理にポジティブになろうとせず、「少し休む」ことも必要です。
  • 「朝起きたらカーテンを開ける」「ラジオ体操をしてみる」など、“行動から整える”のも有効です。

まとめ 〜梅雨を乗り切る知恵〜

梅雨は、ただの「天気の話」ではありません。
私たちの心と体に、確かな影響を与える「環境ストレス」なのです。

でも大丈夫。光を浴びる、体を動かす、睡眠を整える。
そんな日々の小さな工夫が、心の調子を大きく変えてくれます。

つらい時期に必要なのは、「自分を守る知識」と「少しの工夫」だけ。

あなたが今日も、少しでも穏やかな気持ちで過ごせますように。

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参考文献

  • Lam RW et al. “Light therapy for depression: A systematic review and meta-analysis.” 2016.
  • Meyer C et al. “Meteorological variables and depressive mood: A study of 428 adults.” 2022.
  • 田中ら「日照時間と季節性うつの関連:多施設疫学研究」日本精神神経学雑誌, 2015.
  • 日本気象協会・ウェザーニューズ調査レポート, 2023.