こんにちは、薬剤師のともです。
健康や心の不調に不安を抱えている方にこそ伝えたい「音楽の力」について、今回は“科学的な視点”からじっくり解説していきます。
実は近年、音楽ライブやフェスなどの文化活動に参加する人ほど、寿命が長く、うつや不安の症状も軽くなることが、国内外の信頼できる研究から明らかになってきています。
「ライブに行って楽しかったー」で終わらないんです。
心も体も、本当に良くなるんです。
この記事でわかること
- 文化活動(ライブやコンサート)と寿命の関係を示した最新の科学研究
- 音楽ライブがもたらす“幸福感”の心理学的メカニズム
- コンサート参加がストレスを減らし、ホルモンバランスを整える仕組み
- 精神的に落ち込んでいるとき、音楽が持つ回復力とその活用法
ライブ参加で「死亡率が下がる」という衝撃の研究結果
「コンサートに行くと長生きできる」なんて聞くと、ちょっと大げさに感じるかもしれません。
でもこれ、ちゃんとした科学的な裏付けがある話なんです。
スウェーデンでの大規模研究(Bygrenら, 2023)
スウェーデンで約30年にわたって追跡調査された研究では、文化活動(ライブ・劇場・美術展など)に頻繁に参加する人は、全死因死亡率が低下していたという結果が出ています。
- 研究概要:1982~2017年、3311人の成人を対象に3回の調査(各8年間隔)を実施。
- 結果:
- 文化活動の頻度が最も少ない人 → ハザード比 1.63(=死亡率が63%高い)
- 中程度の人 → ハザード比 1.25
- 最も参加していた人 → 参照(=基準)
文化活動の中でも、ライブや演劇、映画など「感情を揺さぶるような体験」がとくに効果的と考えられています。

フィンランドの19年間追跡調査(Nenonenら, 2025)
同様の結果はフィンランドでも確認されています。
30歳以上の男女6548人を対象に最大19年間追跡したところ、
- コンサート・演劇・映画への参加頻度が高い人は死亡率が低い
- 男女ともに「創作活動(演奏、絵画など)」も長寿と関連がある
と報告されています。
つまり、「ライブに行く」ことは、ただの娯楽じゃなく、体にとって“投資”になる健康行動だということです。
音楽体験が“幸福感”を高める理由とは?
ではなぜ、音楽体験がここまで人間の健康に良いのでしょうか?
カギとなるのが、主観的幸福感の上昇です。
韓国の中高生を対象とした調査(Parkら, 2019)
韓国の中学生3633人を対象に行われた縦断研究では、
- コンサート参加頻度が高い生徒ほど「次の年に幸福感が高くなる」傾向
- 特に、もともと幸福感が低かった層に効果が大きい
という結果が出ています。
「集合的エフェルベセンス(高揚感)」が幸福感を引き上げる(Koeflerら, 2024)
アメリカでの研究では、コンサート中に感じる“一体感”や“高揚感”が、
- 人生の意味や価値を強く実感させる
- その幸福感が数日から1週間以上持続する
ことが明らかになっています。
このような「自分はひとりじゃない」「誰かとつながっている」という感覚は、うつ病や孤独感の改善にとって非常に重要です。

フェス参加で「自分らしさ」が回復する(Hampshireら, 2020)
音楽フェス参加後に「幸福感が高まり、自分らしさを肯定できるようになった」という参加者が多数。
これは、精神的に落ち込んでいるときに“自己同一性”を取り戻す上で大きな意味を持ちます。
ストレスホルモンを下げる音楽の力
音楽がもたらすのは、気分的な効果だけではありません。
身体レベルで、ストレスホルモン(コルチゾールなど)を下げる効果も科学的に確認されています。
コンサート前後でホルモンを比較(Fancourt & Williamon, 2016)
ロンドンで117人のライブ参加者の唾液を採取し、ホルモンの変化を測定したところ:
- コルチゾールとコルチゾンが有意に減少
- DHEA(抗ストレスホルモン)は維持
- コルチゾール/DHEA比が改善 → よりリラックス状態に
これは「文化活動が内分泌(ホルモン)系に与える効果を証明した初の研究」とされています。

音楽がもたらす生理的変化
ほかにも、音楽を聴いたり演奏することによって:
- 血圧が下がる
- 心拍数が安定する
- ドーパミン(快楽ホルモン)が分泌される
といった変化が報告されています。
ライブは心が高揚するだけでなく、体の緊張も解きほぐしてくれるということですね。
精神的にしんどいときこそ、“ライブに行く”という選択肢を
うつや不安で外に出るのもつらい・・・そんな日もあると思います。
でも、体調や気分が落ち着いてきたら、「ライブに行く」という行動が自分の回復のきっかけになる可能性があります。
- 一体感のある空間に身を置くことで孤独感がやわらぐ
- 感情を揺さぶる体験が「生きてる実感」につながる
- 翌日以降も幸福感や前向きな気持ちが持続する
「薬を飲むだけじゃ足りない」「でも何をすればいいのか分からない」——そんなときに、音楽ライブは科学的に証明された“もう一つの手段”になりうるのです。
おわりに:音楽は、あなたの味方になる
音楽ライブやフェスは「非日常の楽しみ」ですが、それだけじゃありません。
寿命を延ばす、幸福感を高める、ストレスを減らす——心と体に効く“自然な処方箋”でもあるのです。
健康に不安を感じている人や、気分が落ち込みがちな方こそ、
「音楽を聴きに行く」ことを自分の生活に取り入れてみてください。
薬剤師として、そしてひとりの音楽ファンとして、心からおすすめします。

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参考文献
- Bygren, L. O. et al. (2023). “Cultural participation and mortality: A 35-year follow-up study”. BMJ Open.
- Nenonen, T. et al. (2025). “Cultural engagement and mortality risk in a longitudinal cohort”. BMC Public Health.
- Park, H. et al. (2019). “The impact of concert participation on adolescent happiness: A longitudinal study”. Korean Journal of Education.
- Koefler, J. et al. (2024). “Collective effervescence during live music events and its association with well-being”. Personality and Social Psychology Bulletin.
- Hampshire, K. et al. (2020). “Music festivals and self-identity: Effects on post-event well-being”.
- Fancourt, D. & Williamon, A. (2016). “Live music and hormonal response: A field study”. Public Health.
- Rutgers School of Public Health (2022). “Music, stress reduction, and physiology.”