こんにちは、薬剤師のともです。
過去に豆乳は美容や健康にいいという記事を書きましたが、それは豆乳に豊富に含まれる「イソフラボン」によるものでした。
過去の記事はこちらから⇓
ところが、「豆乳を温めるとイソフラボンが壊れるらしい」というウワサを耳にした方もいるのではないでしょうか?
健康のためにホット豆乳を飲んでいるのに、それが逆効果だったらショックですよね。
この記事では、最新の科学的研究に基づいて「イソフラボンの効果が失われない豆乳の温め方」について徹底的に解説します。
このブログ記事でわかること
- 豆乳に含まれるイソフラボンの種類とその働き
- イソフラボンは加熱でどのように変化するのか?:適度な加熱で吸収量が多いアグリコン型へ
- 科学的に判明している“壊れにくい”加熱温度と方法:「95度以下で10分以下の加熱」
- 健康や美容効果を守るための豆乳の正しい温め方:500Wの電子レンジなら1~1.5分
イソフラボンってそもそも何?
イソフラボンは、大豆に含まれるポリフェノールの一種で、エストロゲン(女性ホルモン)に似た構造を持つことから「植物性エストロゲン」とも呼ばれます。代表的なイソフラボンは以下の3種類:
- ゲニステイン
- ダイゼイン
- グリシテイン
これらはさらに、糖が結合した状態(グリコシド型)と、糖が外れた状態(アグリコン型)の2形態で存在しています。
重要なのは“アグリコン型”のほうが体に吸収されやすく、健康効果も高いということ。
つまり、豆乳の中のイソフラボンがアグリコン型で多く残っていることが、美容・健康にはより好ましいというわけです。

加熱でイソフラボンはどう変わる?
豆乳を温めたとき、イソフラボンはどうなるのでしょうか?
結論から言うと、「イソフラボンの総量は加熱によってほとんど減りません」。ただし、その“形態”は加熱で変化します。
変化の流れはこうです
マロニル型 → アセチル型 → グリコシド型 → アグリコン型 → 分解

加熱が進むと、吸収率の高いアグリコン型に変化しますが、過度に加熱しすぎるとアグリコンも分解してしまうというジレンマがあるのです。
特に、ゲニステインは熱に強い一方、グリシテインは非常に壊れやすいことが研究から分かっています。
つまり、アグリコン型の量を最大にする豆乳の加熱条件を知る必要があるのです!
科学が示す“壊れない”温め方とは?
ここからは、国内外の研究データをもとに、「どんな加熱条件ならイソフラボンを壊さずに済むのか」を見ていきましょう。
ポイント1:温度は“95℃以下”を厳守!
2006年の研究(Liuら)では、95℃以下の温度であれば、ゲニステインは60分間加熱しても安定でしたが、グリシテインはわずか7.5分で50%以上が壊れてしまいました。
ポイント2:加熱時間は“5〜10分”以内に
日本の特許文献(JP4148935B2)でも、85℃で5〜10分の加熱がアグリコン型を守るのに適していると示唆されています。つまり、短時間・中温加熱がベストです。
ポイント3:pHは“中性付近”が理想
酸性(pH3程度)だと分解が進みやすくなります。豆乳のpHは5.6〜7.0の範囲で安定していますが、レモンなどを入れて酸性にして加熱するのは避けましょう。
電子レンジでも壊れる?家庭でできる正しい加熱法
電子レンジで温めた豆乳、実はかなり高温になることがあります。吹きこぼれないよう注意して加熱しつつ、以下のように調整するのが理想です。
●電子レンジ加熱のコツ
- 500〜600Wで1分〜1分半を目安に
- 急激な加熱を避け、加熱中に一度かき混ぜる(面倒ですがこのひと手間が大事!)
- 触って「熱めのお湯」くらい(約60〜70℃)が理想
この温度帯なら、イソフラボンの吸収性が高まり、壊れるリスクも抑えられます。

豆乳の効果を引き出す“賢い飲み方”とは
ここまでを踏まえて、美容や健康効果を最大限に引き出すにはどうすればよいか、まとめてみましょう。
✅ 豆乳加熱のゴールデンルール
- 加熱は85〜90℃以下・5〜10分以内がベスト
- 電子レンジなら500W・1〜1.5分、途中で混ぜる
- 酸を加えての加熱は避ける(例:豆乳レモンティー)
✅ 飲むタイミングは?
- 朝に1杯:女性ホルモンバランスのサポート
- 就寝前:美肌づくりのサポート(ホルモン分泌に連動)
まとめ:加熱は“敵”ではなく“使い方次第”
豆乳を温めること自体が悪いのではありません。
正しく加熱すれば吸収量も増すため、どのように温めるかが大切です。
科学的データに基づいた方法をとれば、イソフラボンの健康・美容効果をしっかりと守りながら、身体を温めることができます。
「この温め方、大丈夫?」と思った方は、ぜひ明日からこの記事の内容を参考にしてみてくださいね。

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参考文献一覧
1. Liu, L., et al. (2006).
Thermal degradation kinetics of isoflavone aglycones from soy and red clover.
Food Chemistry, 99(4), 725–731.
https://doi.org/10.1016/j.foodchem.2005.08.039
2. Fujita M. (2006)
低温スチーミング調理による大豆成分の変化に関する研究報告.
第26回調理科学研究助成報告書(フジサンケイグループ調理科学研究助成)
https://www.fujifoundation.or.jp/report/pdf/026/26_044.pdf
3. 日本特許 第4148935号
「大豆の成分を損なわない調理方法に関する特許(β-グルコシダーゼによるアグリコン生成含む)」
特許公報JP4148935B2
https://patents.google.com/patent/JP4148935B2/ja
4. Yasuda, K., et al. (2006).
Changes in Isoflavone Compositions by Heating and Their Stability.
日本油化学会誌, 55(7), 365–371.
https://doi.org/10.5650/jos.55.365
5. Wang, H.J., Murphy, P.A. (1994)
Isoflavone content in commercial soybean foods.
Journal of Agricultural and Food Chemistry, 42(8), 1666–1673