はじめに
「なんで自分はこんなにダメなんだろう」――そんな思考に、あなたも苦しんできたことがありませんか?
うつ病や不安障害の渦中にあると、自分に対する否定的な考えがぐるぐると頭を支配してしまうことがあります。
僕もかつてそのような時期を経験しました。薬剤師でありながら、自分のこころの不調にはなかなか手が届かなかったのです。一歩も動けず、ベットの中で這いずり回る日々を半年以上過ごしました。
そんな中で出会ったのが「認知行動療法」でした。
そして近年、SNSで話題になっている「ほめ日記」には、この認知行動療法のエッセンスが詰まっていると感じました。
そして実践していくうちに、「ほめ日記」には認知行動療法だけではなく様々な科学的裏付けに基づいたメリットがあるという結論に至りました。
この記事では、自身の体験と、科学的研究に基づいたデータの両面から「ほめ日記の効果と正しいやり方」について僕の考えをお話しします。
読み終えたときに、「ちょっと試してみようかな」と思ってもらえたら嬉しいです。
このブログ記事でわかること
- ほめ療法とはどのような方法か、基本のやり方と効果
- うつ・不安障害の回復における「自己肯定」の重要性
- 筆者が実践して感じた具体的なメリットと実感
- 科学的研究に基づいたほめ療法の有効性と裏付け
「ほめ日記」とは?
ほめ日記とは、自分自身の行動や思考を意識的に“ほめる”ことで、自己肯定感を育て、心の回復力を高めるセルフケアの一つです。
■ ほめ日記のやり方(基本)
- 1日3つ、自分をほめる言葉を書き出す
(必ず3つにしてください。多くても少なくてもダメだと思います) - 内容はどんな小さなことでもOK(例:「朝起きられた」「ちゃんと食べた」「電車に乗れた」)
- 毎日続けることが理想
このような単純な行動が、実は脳の認知の仕組みに働きかけ、自己否定のスパイラルから抜け出すきっかけになるのです。

筆者が実践して感じた4つのメリット
私自身、うつと診断され不安障害にも悩まされた時期がありました。
その経験から、うつからの復帰に必要な過程と、この「ほめ日記」のやり方がクロスオーバーすると感じました。
(1)記憶の整理ができる
1日の終わりに「今日はどんなことがあったか」と振り返ることは、頭の中に散らばっていた出来事を整頓するような感覚が得られます。これは、自己肯定感を高める上で極めて重要な過程です。

(2)ポジティブな認知を強化できる
「自分は役に立っていない」という否定的な思考を、少しずつポジティブな見方に書き換えていく作業が自然に行えるようになります。前述した「認知行動療法」のエッセンスになる部分です。

(3)要約力・思考力のトレーニングになる
「1日3つ」と決めて書くことで、どれを選び、どう表現するかを考える必要があり、脳が前向きに働き出す感覚があります。3つという制約を課すのは、要約力・思考力のトレーニングの他に、制約をこなせたという自己肯定感を強化する効果もあります。多くても少なくてもダメ。必ず3つにしてください。
(4)SNSでの共有がモチベーションになる
僕はX(旧Twitter)で「#ほめ日記」のタグを使って日記を共有しています。他の人との交流が生まれることで、続ける力になると感じます。
科学的にも“お墨付き”。ほめ日記が心に効く5つの理由
(1)脳は「自分をほめる言葉」を現実として受け取る
脳は、自分が言った言葉を“事実”として処理します。「私は今日、がんばった」と書くと、それを本当に“がんばった”と認識するようになるのです。これは「自己アファメーション理論」と呼ばれる心理学理論に基づいており、ストレス耐性や集中力の向上に効果があるとされています(Creswell et al., 2005)。
(2)“できたこと”に目を向けると、自己否定の思考が変わる
落ち込んでいるときは「できなかったこと」ばかりが目に入りやすくなりますが、「今日はこれができた」と記録するだけで、脳の焦点がポジティブな方向に移ります。これは認知行動療法(CBT)の考え方と一致し、うつ病の回復支援にも用いられている科学的根拠のある方法です。

(3)書くことで、感情を整理してストレスを減らせる
日記に書くことで、自分の気持ちや出来事が“外に出る”感覚があります。これは心の中のモヤモヤを整える作業であり、心理学では「感情ラベリング」や「筆記療法」と呼ばれます(Pennebaker, 1997)。
(4)要約する力が、脳のトレーニングにもなる
「今日の3つ」を短くまとめる作業は、脳の前頭前皮質を活性化させ、考える力や決める力(実行機能)、そして自分の思考を客観視する力(メタ認知)を高めてくれると言われています(Lieberman et al., 2007)。
(5)SNSで人とつながることで、継続と安心感が得られる
SNSで日記を共有し、他者からコメントや共感をもらうことは、「見守られている」という安心感につながります。これは「ソーシャルサポート」として、精神的健康に非常に良い影響を与えると考えられます。
続けるコツと注意点
■ 完璧を目指さない
書けない日があってもOK。「思いつかない自分もよく頑張ってる」とほめてあげてください。
■ 他人と比べない
SNSで共有しても、他人の成果と比べる必要はありません。あなた自身のペースが一番です。

■ ネガティブが出てきたら受け止める
「今日は何もできなかった…」と思った日でも、「そう感じるくらい自分は頑張ってる」と受け止めてみてください。
まとめ
「自分をほめる」――たったそれだけの行為が、心の奥深くにポジティブな変化をもたらす可能性があります。
私は、薬剤師という専門職に就いていながら、うつや不安に苦しみ、自信をなくしていた時期がありました。
そんな自分が、少しずつ立ち直っていった体験を効率的に実践できると感じたのが「ほめ日記」です。
今でも落ち込む日はありますが、以前より「そんな自分も悪くない」と思えるようになりました。
それは、「自分を認める習慣」を持てたからだと思っています。
あなたも今日から始めてみませんか?
X(旧Twitter)で「#ホメ日記」「#みんなdeポジティブ人間化」などタグをつけてつぶやいてみてください。
きっと僕も会いに行きます。

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参考文献
- Seligman, M. E. P., Steen, T. A., Park, N., & Peterson, C. (2005). Positive psychology progress: Empirical validation of interventions. American Psychologist, 60(5), 410–421.
- Pennebaker, J. W. (1997). Writing about emotional experiences as a therapeutic process. Psychological Science, 8(3), 162–166.
- Creswell, J. D., et al. (2005). Affirmation of personal values buffers neuroendocrine and psychological stress responses. Psychological Science, 16(11), 846–851.
- Lieberman, M. D., et al. (2007). Putting feelings into words: Affect labeling disrupts amygdala activity in response to affective stimuli. Psychological Science, 18(5), 421–428.
- Cohen, S., & Wills, T. A. (1985). Stress, social support, and the buffering hypothesis. Psychological Bulletin, 98(2), 310–357.
※本記事は医療的アドバイスを目的としたものではありません。心身の不調が続く場合は、必ず医療機関をご利用ください。