~薬剤師ともが伝える、健康的な「最適な睡眠時間」とは~
はじめに:睡眠=健康という常識に“待った”!
「よく眠れることは健康の証」
「たくさん寝ると体にいい」
そんなふうに思っていませんか?
実はこの常識、最新の科学的研究では“間違い”である可能性が高いのです。
アメリカで行われた138万人を対象にした大規模調査では、1日9時間以上眠る人の死亡リスクが23%も高まるという衝撃的なデータが明らかになりました(Gallicchio & Kalesan, 2010)。
この記事では「寝すぎによる健康リスク」と、「健康寿命を延ばす正しい睡眠習慣」について、薬剤師の視点でくわしく解説します。
この記事でわかること
・寝すぎを避けるために今日からできる5つの習慣
・なぜ「寝すぎ」でも健康リスクが高まるのか、科学的な根拠とは?
・寝不足と寝すぎ、どちらのほうが死亡リスクが高いのか?
・理想の睡眠時間「7~8時間」が健康に与える4つの恩恵
そもそも、理想の睡眠時間って何時間?
私たちは一晩に何時間眠るべきなのでしょうか?
アメリカ・ジョンズホプキンス大学の研究者GallicchioとKalesanは、過去に発表された16件の研究(合計138万人)を統合し、睡眠時間と全死亡率との関係を調査しました。
その結果、次のような“U字型”の関係が明らかになったのです。
睡眠時間 | 死亡リスク(相対値) |
---|---|
6時間未満 | +10%(RR=1.10) |
7~8時間 | 基準(最もリスクが低い) |
9時間以上 | +23%(RR=1.23) |

なぜ「寝すぎる」と健康に悪いのか?4つの科学的理由
① 慢性疾患の影響を受けている可能性がある
長時間眠る人は、実は潜在的にうつ病・心臓病・がんなどを抱えていることが多いという研究結果があります。
つまり「長く寝られる体調」ではなく、「長く寝なければ動けないような体調」である可能性があるのです。
② 睡眠の“質”が悪い
睡眠時間が長い人の中には、中途覚醒が多く、深い睡眠が取れていない人も少なくありません。
量だけに目を向けていると、「眠っているつもり」で実は回復できていない可能性があります。
③ 身体活動量の減少
長時間の睡眠=起きている時間の減少。
結果として、日中の活動量が減り、代謝の低下・肥満・糖尿病のリスク増加につながります。
④ 睡眠とホルモンバランスの乱れ
寝すぎは、体内時計(サーカディアンリズム)やホルモン分泌に影響し、自律神経のバランスも崩れやすくなります。

逆に「寝不足」でも死亡リスクは高まる
睡眠時間が6時間未満の人も、死亡リスクが10%上昇することが同じ研究で示されています。
これは、寝不足によって以下のような問題が起こるためです。
- 免疫力の低下
- 血圧上昇、心臓病リスク増加
- ホルモンの乱れによる太りやすさ
- 精神的ストレスの蓄積
健康のカギは「7〜8時間の睡眠」
Gallicchioらの研究で最も死亡リスクが低かったのは、1日7~8時間の睡眠でした。
この範囲内で眠れている人は、心臓病・脳卒中・がん・糖尿病などの慢性病リスクが最も低いと示唆されます。
また、日中の集中力や記憶力、仕事のパフォーマンスも高い傾向があります。
今日からできる「寝すぎ防止」の5つの生活習慣

- 目覚まし時計を使わずに起きる努力を
体内時計を整え、自然な目覚めを習慣に。 - 日光を浴びて体内時計をリセット
起床後30分以内の日光で、メラトニンの分泌を正常化。 - 寝る直前のスマホ・PCは控える
ブルーライトが睡眠ホルモンを妨げます。 - カフェインは午後3時以降控える
カフェインの覚醒作用は想像以上に長く続きます。 - 昼寝は“短く”が基本
15~20分が理想。長すぎる昼寝は逆効果。
まとめ:寝れば寝るほど健康、は間違い!
- 9時間以上の睡眠で死亡リスクが23%上昇
- 6時間未満の睡眠でも死亡リスクが10%上昇
- 理想の睡眠時間は7~8時間
- 寝すぎや寝不足を防ぐために、生活リズムを整えることが重要
「よく寝ればいい」というのは半分正解で、半分間違い。
“ちょうどよく、質の良い睡眠”をとることが、健康寿命をのばす秘訣なのです。

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参考文献
Gallicchio L, Kalesan B. Sleep duration and all-cause mortality: a systematic review and meta-analysis of prospective studies. Sleep. 2010 May;33(5):585-92. PubMedリンク