はじめに:不安やストレスに悩むあなたへ
最近、「なんとなくイライラする」「疲れがとれない」「動悸がする」「夜に眠れない」
そんな症状に悩んでいませんか?
それらは自律神経の乱れが関係しているかもしれません。
僕たち現代人は、スマホや仕事のプレッシャー、不規則な生活などによって自律神経のバランスが乱れがちです。
特に、交感神経が過剰に優位になってしまい、リラックスをつかさどる副交感神経が働きにくくなることが、不眠や不安感の背景にあることも。
そんなとき、医学界で注目されているのが、「魚の油」とも呼ばれるDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)です。これらは”オメガ3脂肪酸”という種類の油で、実は心と体のバランスを整える力があると科学的にもわかってきました。
この記事では、最新の科学論文をもとに、DHAやEPAが自律神経にどう作用し、不安やストレスにどう効果があるのかを徹底解説します。
このブログ記事でわかること
- 自律神経の乱れが起こす不調と、DHA・EPAの関連性
- 科学論文に基づくDHA・EPAの効果(心拍・ストレス・不安への作用)
- 自律神経を整えるために必要なDHA・EPAの摂取量と食品例
- 日本人に多い「隠れオメガ3不足」とその対策法
自律神経の乱れとは?よくある症状とメカニズム
私たちの体には、「自律神経」と呼ばれる、自分の意思ではコントロールできない神経のネットワークがあり、呼吸や心拍、消化、血管の収縮などを24時間休まずコントロールしています。
自律神経には2種類ある
- 交感神経:活動モード。心拍数や血圧を上げ、集中力を高める。
- 副交感神経:休息モード。心拍数を下げ、リラックスさせ、睡眠を促す。
この2つのバランスが崩れると、体と心にさまざまな不調が出てきます。
自律神経の乱れでよくある症状
- 不安感、パニック症状
- 動悸、胸のザワつき
- 眠れない、途中で起きる
- めまい、ふらつき
- 手足の冷え
- 胃腸の調子が悪い

精神科や心療内科を受診する前に、まずは生活習慣や食事を見直すことが重要です。そこで注目されているのが、DHA・EPAといったオメガ3脂肪酸の働きです。
DHA・EPAとは?心と神経にうれしい栄養素
DHA・EPAはオメガ3脂肪酸
DHAやEPAは、青魚に多く含まれる「オメガ3脂肪酸」の一種です。
成分名 | 特徴・はたらき |
---|---|
DHA | 主に脳や神経に多く含まれ、神経伝達をスムーズにする。記憶や情緒の安定にも関与。 |
EPA | 炎症を抑える、血流を改善する。動脈硬化予防やうつ・不安の軽減効果も注目。 |
体内で合成できないため、食事やサプリメントでの補給が必要です。
DHA・EPAが自律神経に与える影響|科学的根拠に基づく解説
◎心拍数を下げてリラックス状態へ導く
アメリカ心臓協会の研究(Mozaffarianら, 2005)では、DHA・EPAを1日1g以上摂取すると、安静時の心拍数が平均1.6〜2.5拍/分低下したという結果が出ています。
心拍数が下がる=副交感神経が優位になり、リラックス状態に近づいているというサインです。

◎心拍変動が改善し、ストレス耐性がアップ
魚油サプリメントを摂取した人では、副交感神経の指標が有意に上昇。逆にストレス時に優位になる交感神経指標は低下していました(Xinら, 2013)
つまり、DHAやEPAは交感神経の興奮を鎮め、副交感神経をサポートすることが科学的に示されているのです。
不安・ストレスに対する効果
◎医学生を対象にした研究で不安スコアが20%低下
アメリカの医学部生68人を対象に、DHA・EPA(1日2.5g)を摂取させた研究(Kiecolt-Glaserら, 2011)では、ストレス下でも不安スコアが約20%減少し、炎症マーカーであるIL-6も有意に低下しました。
この結果は、「健常者でも不安に対してDHA・EPAが働く」ということを示しています。
◎うつや不安障害の方にも一定の効果
うつ病や不安障害の患者を対象にした研究(Carneyら, 2010)でも、DHA・EPAを併用した群では、心拍変動が悪化しにくい=自律神経が安定していたというデータがあります。
症状の改善は個人差がありますが、補助療法としての可能性が高いと考えられています。
どれくらい摂ればいい?1日の目安量と食品例
ではどれくらい摂取すればいいのでしょうか?
DHA・EPAの効果を期待するためには、ある程度の摂取量が必要です。
◎効果を実感しやすい目安量:
- 最低でも1日あたり500mg〜1,000mg以上(EPA+DHAの合計)
- 精神面でのサポートには、2,000〜2,500mgの摂取が効果的とされる研究も
◎具体的な食品での目安

魚を毎日食べるのが難しい人は、サプリメントでの補助も現実的な選択です。
日本人にも多い「隠れオメガ3不足」
厚生労働省の調査では、現代の日本人のDHA・EPAの平均摂取量は1日700〜800mg程度。魚を食べる機会が減ったことで、昔に比べて大きく減少しています。
- 若年層:外食や肉中心の食生活で特に不足しがち
- 高齢者:調理頻度が下がり、魚の摂取量も減少
こうした背景から、「魚を食べているつもり」でもオメガ3が足りていない人が増えており、結果的に自律神経の乱れや不安感を抱えやすくなっているのです。
摂取のコツと注意点
◎吸収を高めるポイント
- 食事中に摂取する(脂溶性なので、油と一緒だと吸収率アップ)
- 継続的に摂ることが大切(効果を実感するには数週間〜数ヶ月)
◎摂りすぎに注意
- 血液をサラサラにする作用があるため、抗血栓薬を服用中の方は医師に相談を
- 1日3,000mgを超える場合は医療者の指導のもとで
まとめ|DHA・EPAは“心を落ち着かせる油”だった
DHAやEPAは、魚に含まれる”ただの油”ではありません。心と体をつなぐ自律神経を整える、まさに“天然の精神安定剤”のような存在です。
- 心拍数を安定させ、リラックスモードを引き出す
- ストレスに強い体をつくる(HRVの改善)
- 不安感や情緒の不安定さに働きかける
自律神経の乱れに悩む方こそ、まずは日々の食事からDHA・EPAを取り入れてみるのがおすすめです。魚料理が苦手な方でも、サプリメントで補う方法もあります。
心がザワつくとき、眠れない夜が続くとき。そんなときこそ、「魚を食べる」「DHA・EPAを意識する」——小さな習慣が、あなたの毎日を変えていくかもしれません。

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参考文献一覧
- Mozaffarian D, Geelen A, Brouwer IA, et al.
Effect of fish oil on heart rate in humans: a meta-analysis of randomized controlled trials.
Circulation. 2005;112(13):1945-1952. - Xin W, Wei W, Li X.
Short-term effects of fish-oil supplementation on heart rate variability in humans: a meta-analysis of randomized controlled trials.
Am J Clin Nutr. 2013;97(5):926–935. - Kiecolt-Glaser JK, Belury MA, Andridge R, et al.
Omega-3 supplementation lowers inflammation and anxiety in medical students: a randomized controlled trial.
Brain Behav Immun. 2011;25(8):1725–1734. - Carney RM, Freedland KE, Rubin EH, et al.
Omega-3 augmentation of sertraline in the treatment of depression in patients with coronary heart disease: a randomized controlled trial.
JAMA. 2009;302(15):1651–1657. - 厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査結果」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_14156.html - Sauder KA, McCrea CE, Farni KE, et al.
Effects of omega-3 fatty acid supplementation on heart rate variability at rest and during stress in adults with moderate hypertriglyceridemia.
Psychosom Med. 2013;75(4):382–389. - Romieu I, Barraza-Villarreal A, Escamilla-Nuñez MC, et al.
Omega-3 fatty acid prevents heart rate variability reductions associated with particulate matter.
Am J Respir Crit Care Med. 2005;172(12):1534–1540.