非認知能力の伸ばし方とは?家庭でできる7つのポイントを解説

子育ての科学

こんにちは。小児科で働く薬剤師ともです。
僕は普段、病院で子どもたちや親御さんと関わる中で、「この子、すごく粘り強いな」「失敗しても立ち直るのが早いな」と感心することがあります。
実はこうした“目には見えにくいけれど、人生を左右する力”のことを、最近では「非認知能力」と呼ぶんです。

IQやテストの点数のように数値化はされないけれど、自制心や共感力、やり抜く力といった非認知能力は、子どもの将来の収入や幸福度にまで影響を与えることが、世界中の研究でわかってきました。

今回は、そんな非認知能力を家庭でどう育てていけるのか?について、国内外の科学的な研究をもとに、わかりやすくお伝えしていきます。


この記事を読む4つのメリット

  1. 非認知能力とは何か?がスッキリわかる
  2. 将来の学力や年収とどんな関係があるかを科学的に理解できる
  3. 家庭でできる実践法を、研究に基づいて具体的に学べる
  4. 今日からすぐ始められる親の声かけや遊び方のヒントが得られる

非認知能力とは?IQに見えない「生きる力」

「非認知能力」という言葉、初めて聞いた方も多いと思います。

これは、IQ(=認知能力)のように数値で測れないけれど、人が社会の中でうまくやっていくために必要なスキルのこと。

たとえば:

  • 自制心(自己コントロール):がまんする力、感情のコントロール
  • グリット(やり抜く力):目標に向かって努力を続ける力
  • 共感性:他人の気持ちを理解し、寄り添う力
  • レジリエンス:失敗しても立ち直る力

こうした力が強い子ほど、実は将来的に学業成績がよくなり、就職や収入面でも成功しやすいことが、長期にわたる研究で次々と明らかになっています。

非認知能力とは何か?を具体的に解説した記事はこちら ⇓


将来の年収や学力にも影響?非認知能力と成功の関係

非認知能力のすごさを証明する代表的な研究に、ニュージーランドのダニーデン研究(Moffittら, 2011)があります。

この研究では、約1000人の子どもたちを32年間追跡
その結果、10歳のときの自制心の高さが、将来の年収・学歴・犯罪率・健康状態にまで関係することがわかりました。

さらに、「やり抜く力(グリット)」が高い子ほど学業成績が良いということも、アメリカの心理学者アンジェラ・ダックワースらの研究から報告されています。

つまり、「頭の良さ」だけでなく、「コツコツやる力」や「くじけない心」が、子どもの人生を大きく左右しているのです。

家庭でできる!非認知能力の育て方7つのポイント

それでは実際に家庭でできる非認知能力の育て方について、7つのポイントにまとめてご紹介します。

非認知能力を育てるのにおすすめ習い事ランキングはこちらの記事で解説してます ⇓


① 感情に寄り添う「感情コーチング」

子どもが泣いたり怒ったりしたとき、つい「泣かないの!」「いい加減にしなさい!」と言ってしまいがちです。
でも、それでは子どもは「自分の感情は否定されるもの」と感じてしまい、感情を抑え込むか、逆に爆発させるようになります。

感情コーチングとは、子どもの気持ちをまず受け止め、言葉にしてあげることです。

たとえばこんなふうに声をかけてみてください:

  • 「悔しかったね、がんばったのにうまくいかなかったんだね」
  • 「今すごくイライラしてるの、わかるよ」
  • 「お友達におもちゃ取られて、びっくりしたんだよね」

このように感情を“翻訳”してあげることで、子どもは「自分の気持ちを理解してもらえた」と安心します。
そして徐々に、自分の感情を理解し、言葉で表現し、調整する力=自制心が育っていくのです。


② 会話量より「会話の質」を大切に

「子どもにはたくさん話しかけましょう」というのはよく言われますが、大切なのは“話す量”だけではありません。
むしろ子どもが自分の考えを表現する時間を持てているかがカギです。

親が一方的に話すのではなく、子どもに問いかけ、考えを引き出すようなオープン・クエスチョンを意識してみましょう。

たとえば:

  • 「今日、保育園でどんなことがいちばん楽しかった?」
  • 「どうしてそれを選んだの?」
  • 「うまくいかなかったとき、どんな気持ちだった?」

また、子どもが何かを話したら途中でさえぎらず、最後まで聴くことも大事です。
「うん、うん、それで?」と興味を示しながら聴くだけで、子どもは「自分の話を大切にしてもらえた」と感じます。

こうしたやりとりの積み重ねが、自己肯定感・思考力・表現力といった非認知能力につながっていきます。


③ 「予測可能なルール」で自制心を育てる

子どもが自分の行動をコントロールできるようになるには、家庭に一貫したルールや習慣があることが大切です。

ルールは多ければよいわけではなく、「予測できて、守れるもの」がポイント。

たとえば:

  • 「お菓子は1日1回までね」
  • 「テレビは夕飯のあと、30分だけ」
  • 「夜9時になったらお布団に行こうね」

さらに、そのルールを守るよう促すときに、「なんでこのルールがあるのか?」を説明すると、子どもは納得して動きやすくなります。

×「ダメって言ってるでしょ!」
◎「夜遅くまで起きてると、朝すごく眠くてつらくなっちゃうんだよ」

こうした環境づくりが、子どもにとっての「内なるブレーキ(自制心)」を育てる土台になります。


④ 「小さな成功体験」でやり抜く力を育てる

やり抜く力(グリット)は、何かに向かってコツコツ努力する力です。
この力は、才能よりも成功体験を積み重ねることで育ちます。

成功体験とは、大きな成功ではなくてもOK。
たとえば:

  • 「1週間、毎朝ハンカチを持って行けた」
  • 「難しかったパズルをあきらめずに完成できた」
  • 「できなかった縄跳びが、今日10回跳べた!」

ここで大切なのは、結果よりもプロセスを評価すること

◎「できたね!でも、すぐできたわけじゃなくて、たくさん練習してたよね」
◎「途中でくじけそうだったのに、がんばって続けたの、すごかったよ」

このように、「あきらめずにやった」こと自体を認めることで、「がんばればできる」という自己効力感が育ちます。


⑤ 親自身が「モデル」になる

子どもは、親の言葉より親の行動を見て育ちます
つまり、親の感情の扱い方や、他人との関わり方が、そのまま子どもに写し取られるんです。

たとえば:

  • イライラしたときに「ちょっと深呼吸しよう」と言って自分でコントロールする姿を見せる
  • 他人に親切にする姿(ありがとう、ごめんね、をきちんと伝える)を見せる
  • 自分の失敗を子どもに正直に話す(「今日はうまくいかなくて悔しかったけど、またがんばるよ」)

こうした日常の小さな姿こそが、子どもにとって最高の“生き方の教材”になります。


⑥ 「遊び」で非認知能力は育つ

遊びは単なる暇つぶしではありません。
子どもにとっては、社会性や自己制御力を学ぶトレーニング場なんです。

特におすすめは:

  • ごっこ遊び:店員さんごっこ、家族ごっこなど、役割を演じることで「他人の立場で考える力=共感性」が育つ
  • ルールのある遊び:すごろく、じゃんけん、鬼ごっこなどは「順番を待つ」「ルールを守る」などの自制心が鍛えられる
  • 協力ゲームや工作:兄弟や親と協力して何かを作る体験は、「意見をすり合わせる力」「粘り強さ」が育つ

また、子どもが主体的に遊べるように、大人は「口を出しすぎず、見守る」姿勢も大切です。


⑦ 「振り返り」の時間をつくる

子どもが何かをやり終えたあとや、うまくいかなかったときこそ、“考える力”を育てるチャンスです。

その時に使える魔法の質問がこちら:

  • 「今日はどんなことがうれしかった?」
  • 「どうしてうまくいったと思う?」
  • 「失敗しちゃったけど、次はどうすればいいかな?」

こうした「振り返りの対話」を繰り返すことで、子どもは自分の行動を客観的に見たり、改善策を考えたりできるようになります。

これは「メタ認知」と呼ばれる力で、学習力や問題解決力を支える非常に重要な非認知能力です。

子どもは「環境」で育つ。今日からできることから

非認知能力は、遺伝ではなく育てられる力
そしてその多くは、「家庭の関わり方」によって大きく左右されます。

大切なのは、

  • 完璧を目指さないこと
  • 親が楽しみながらやること
  • 少しずつ、日々の中に取り入れていくこと

僕自身、医療の現場でたくさんの親子と関わる中で、「ああ、このお母さんの言葉かけ、すごくいいな」と思う瞬間に何度も出会ってきました。

非認知能力は“目に見えないギフト”です。
毎日の小さな関わりの中で、そのギフトを少しずつ育てていきましょう。


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参考文献

  1. Moffitt TE et al. (2011). A gradient of childhood self-control predicts health, wealth, and public safety. PNAS, 108(7), 2693–2698.
  2. Duckworth A et al. (2007). Grit: Perseverance and passion for long-term goals. J Personality and Social Psychology, 92(6), 1087–1101.
  3. Credé M et al. (2017). Much Ado About Grit: A Meta-Analytic Synthesis of the Grit Literature. Journal of Personality and Social Psychology, 113(3), 492–511.
  4. Hart B, Risley TR. (1995). Meaningful Differences in the Everyday Experience of Young American Children.
  5. Romeo RR et al. (2018). Beyond the 30-Million-Word Gap: Children’s Conversational Exposure Is Associated With Language-Related Brain Function. Psychological Science, 29(5), 700–710.
  6. Gottman JM et al. (1996). Parental meta-emotion philosophy and the emotional life of families: Theoretical models and preliminary data. Journal of Family Psychology, 10(3), 243–268.
  7. Havighurst SS et al. (2020). Tuning in to Kids: Emotion coaching program. Evidence Base, 2020(1), 1–19.
  8. Bodrova E, Leong DJ. (2006). Tools of the Mind: The Vygotskian Approach to Early Childhood Education.
  9. Eisenberg N et al. (2006). Prosocial development in early childhood: A longitudinal study. Developmental Psychology, 42(6), 993–1006.