こんにちは、薬剤師のともです。
「ダイエット中なのにチートデイって本当に必要なの?」
「好きなものを食べたら太るだけじゃないの?」
そんな疑問を持つあなたに、今回は最新の研究をもとに「チートデイ」の正しい使い方をお伝えします。
この記事でわかること
- チートデイが代謝や脂肪燃焼に与える科学的効果
- 食欲や空腹に関わるホルモン(レプチン・インスリン・グレリン)との関係
- チートデイが肌・髪・美容に与える意外な影響
- リバウンドを防ぐ!正しいチートデイのやり方
そもそもチートデイとは?
「チートデイ(Cheat Day)」とは、ダイエット中にあえて好きなものを食べてOKにする特別な日のこと。
直訳すると“ずるをする日”ですが、計画的に取り入れれば、以下のようなメリットがあります。
- 食事制限によるストレスの軽減
- ダイエットの継続モチベーションUP
- 代謝やホルモンのバランス調整

チートデイで本当に代謝は上がる?
ダイエット中は、体重が減るにつれて「代謝」も落ちていきます。これは体が“省エネモード”に切り替わるから。
短期のチートデイの効果は?
研究では、チートデイ翌日に総消費エネルギーが一時的に約7%増加することが報告されています。ただし、この増加は「消化に使われる熱(食事誘発性熱産生)」が主で、基礎代謝そのものが大きく上がるわけではありません。
糖質を中心に摂ることで、より代謝に効果が出やすいとされています。
長期的にはどうか?
計画的なチートデイの実証実験を行ったのがオーストラリアのクイーンズランド大学の「MATADOR研究(2018年)」です。
この研究では、肥満男性を対象に、以下の2つのダイエット方法を比較しました:
- グループA:16週間連続でカロリー制限
- グループB:2週間制限 → 2週間維持 を8回繰り返す(合計30週)
結果は以下のように、明確な差が見られました。
- 総体重の減少量:グループA(減量のみ):平均 -9.1kg/グループB(チートデイあり):平均 -14.1kg
- 体脂肪の減少量:グループA:-7.6kg/グループB:-11.1kg
- 安静時代謝量の低下:グループAの方が大きな代謝の低下を示し、グループBは代謝の維持が良好でした(適応熱産生の抑制)。
この結果から、計画的に“食事の休止期間”を挟むことで、脂肪をより多く減らし、リバウンドも少なく、代謝の低下を防げる可能性が示されました。

ホルモンから見るチートデイの効果
チートデイが影響する代表的なホルモンは以下の3つです。
● レプチン(満腹ホルモン)
- 脂肪が減ると分泌量が減り、食欲が増す
- チートデイで炭水化物を多く摂ると、一時的に28%上昇
- 翌日から再び制限食に戻るとすぐ低下
● インスリン(血糖コントロール)
- 糖質を食べると急増し、筋肉のグリコーゲン補充に役立つ
- 過剰摂取すると脂肪合成・皮脂分泌が増え、肌荒れの原因に
● グレリン(空腹ホルモン)
- 空腹時間が長いと増える
- 食事を摂ると急激に下がる → 満腹感が持続
美容にも影響あり?肌・髪へのメリットと注意点
ポジティブな影響
- ストレスホルモン(コルチゾール)を下げる
- 栄養補給で肌や髪に必要な成分が届く
- 炭水化物の補給により、肌や筋肉がふっくらする
ネガティブな影響
- 高GI食品・甘いもの→ニキビや皮脂増加のリスク
- 揚げ物・スナック→肌老化・炎症促進
- 塩分過多→むくみやすくなる
医療論文に学ぶ「正しいチートデイのやり方」
チートデイを効果的に取り入れるためには、単に「好きなものを食べる日」としてではなく、体の仕組みと心理状態を理解した“戦略的なツール”として活用することが重要です。ここでは、医学的研究をベースにした「正しいチートデイの取り入れ方」を、頻度・内容・タイミング・注意点の4つの視点から詳しく解説します。

■ 頻度の目安は「体脂肪率」と「ダイエットの段階」で変える
医学的な指標では、体脂肪率や減量の進行度に応じてチートデイの頻度を調整するのが効果的とされています。以下は一つの目安です。
- 体脂肪率30%以上(肥満〜高め):チートデイは基本的に不要、あるいは月1回程度。ダイエットの初期段階では「慣れる」ことが優先されるため、過剰なチートは逆効果。
- 体脂肪率25〜29%(平均的):2〜3週間に1回の頻度で設定可能。停滞期の突破やストレスの軽減に有効。
- 体脂肪率20〜24%(標準的〜やや絞れている):週1回のチートデイが取り入れやすく、ホルモンバランスや筋肉の維持に有利。
- 体脂肪率20%未満(かなり絞れている):筋量を落とさないためにも、3〜5日に1回のリフィード(高炭水化物日)が必要なケースも。
女性の場合はホルモンバランスも考慮して、生理周期に応じた設計も効果的です(詳細は後述)。
■ 内容は「高炭水化物・低脂肪・高タンパク質」が原則
医学的な観点から、チートデイに最も効果的なのは以下の栄養バランスです。
- 炭水化物:多めに(50〜60%)
白米、全粒パン、さつまいも、パスタ、果物など。グリコーゲン補充、レプチン分泌の一時的上昇に寄与。 - タンパク質:しっかりと(20〜30%)
肉、魚、大豆製品、乳製品、卵など。筋肉量を維持し、満腹感も得られる。 - 脂質:控えめに(15〜25%)
良質な脂(ナッツ、オリーブオイル、アボカドなど)は可。揚げ物や菓子のトランス脂肪酸は避ける。
■ どれくらい食べてもいいの?「維持カロリー+α」が理想
「好きなものを好きなだけ食べる」という極端なチートデイは、せっかくの努力を帳消しにするリスクがあります。基本の考え方は:
- 摂取カロリーの目安:維持カロリー+10〜20%程度
例:維持カロリーが2,000kcalの人は、チートデイは2,200〜2,400kcalまで。極端にオーバーしない範囲で、満足感と効果のバランスを取る。
維持カロリーは「現在の体重×25〜30kcal」で大まかに求められます(活動量によって変動あり)。
■ タイミングは「停滞期」または「強度の高い運動前後」がおすすめ
チートデイのタイミングとして効果的なのは:
- 体重が減らなくなってきた“停滞期”
MATADOR研究でも、計画的な“休養期間”が代謝低下を防ぐと実証。 - 強度の高いトレーニング前日または当日
グリコーゲンを補充し、パフォーマンスを高める。トレーニングで糖質を燃やせるため、脂肪蓄積も抑えやすい。 - 生理前(黄体期)
体温・代謝が上がり、自然と食欲も増す時期。チートデイをこのタイミングに合わせると、心身のストレスを減らせる。
● 翌日の切り替えがカギ!
- チートデイは「1日限定」と決める
- 翌日は必ず通常の減量食に戻す
- 我慢しすぎず、心と体に優しくリセット
- 罪悪感はNG。「戦略的な休憩」だと捉える
● よくあるNGパターンと対策
- 甘いものが止まらない → 事前にメニューと量を決めておく
- 「今日は特別」と言って暴飲暴食 → 維持カロリーの目安を知る
- 翌日の断食や自己嫌悪 → むしろ逆効果!穏やかに切り替えを
まとめ
チートデイは、正しく活用すれば「ダイエット継続の味方」になります。
❌ 好き放題食べるだけではNG
✅ 科学的にホルモン・代謝・心理面に配慮して実践すれば◎
あなたの今の体・気分に合わせて、上手に休憩を入れながら、無理のないダイエットを続けていきましょう。

参考文献
- Byrne, N. M., et al. (2018). Intermittent energy restriction improves weight loss efficiency in obese men: the MATADOR study.
- Dirlewanger, M., et al. (2000). Effects of short-term carbohydrate or fat overfeeding on energy expenditure and plasma leptin concentrations in healthy female subjects.
- Müller, M. J., et al. (2015). Adaptive thermogenesis with weight loss in humans.
- Anton, S. D., et al. (2017). Fluctuations in weight and energy intake: contributions to weight loss maintenance.
- Leidy, H. J., et al. (2011). The role of protein and meal timing in weight management.
- Smith, S. R., et al. (2009). Dietary Glycemic Index and Glycemic Load and Risk of Type 2 Diabetes Mellitus.
- 日本肥満学会(2021年)『肥満症診療ガイドライン』