こんにちは。薬剤師のともです。
SNSや雑誌でよく見かける「糖質制限ダイエット」。
「ご飯やパンを抜くだけで痩せる!」と話題になっていますが、実際にはどうなのでしょうか?
「本当に効果があるの?」「体に悪影響はないの?」「リバウンドしない?」と疑問に思う方も多いはずです。
この記事では、国内外の信頼できる研究データをもとに、糖質制限ダイエットの効果とリスクをわかりやすく解説します。
この記事でわかること
- 糖質制限ダイエットは本当に痩せるのか?
- ホルモンバランスや体の仕組みに与える影響とは?
- 健康リスクや栄養面での注意点
- リバウンドを防ぐために知っておくべきポイント
糖質制限ダイエットって?基本のおさらい
糖質制限ダイエットとは、ご飯やパン、麺類、砂糖などの炭水化物を制限し、その代わりにたんぱく質や脂質を多く摂る食事法です。
「ケトジェニックダイエット」や「ローカーボダイエット」など、さまざまなスタイルがありますが、共通するのは“糖質の摂取量を減らす”という点。
近年、糖質制限は「短期間で体重が落ちやすい」「血糖値を安定させる」と注目されています。
本当に痩せるの?糖質制限の減量効果
最新の研究では、糖質制限ダイエットは確かに体重減少に効果があると報告されています。
特に短期的(3〜6ヶ月)には、従来の低脂肪ダイエットよりも1〜2kg多く体重が減少する傾向があります。
ただし、その効果は永続的ではありません。
1年以上続けた場合、体重減少の差は小さくなり、従来のダイエットとほとんど変わらなくなるという研究結果もあります。
さらに、糖質制限による初期の体重減少は、水分が抜けたことによる“見せかけの減量”である可能性もあります。
ホルモンバランスや代謝に与える影響
糖質制限によって注目される変化のひとつがインスリン感受性の改善です。
糖質を控えることで血糖値の上昇が緩やかになり、インスリンの分泌量が減少します。
これにより、体脂肪の蓄積が抑えられ、空腹感も軽減しやすくなると考えられています。
また、女性特有のホルモンバランスに関しても注目すべき変化があります。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の女性を対象とした研究では、糖質制限によって体重が減り、過剰な男性ホルモン(テストステロン)が減少、月経の周期が整った例も報告されています。
ただし、過度な糖質制限は逆に女性ホルモンのバランスを崩すリスクもあります。
極端なカロリー制限により、無月経やPMS悪化のリスクが高まることもあるため要注意です。

健康リスクや注意点
栄養不足
主食や果物を減らすことで、ビタミンB群や食物繊維が不足しやすくなります。
結果として便秘や肌荒れ、疲れやすさが起こることも。
腎臓への負担
高たんぱく食を続けると、腎機能に負担がかかるのでは?という不安もあります。
ただし、健康な人が1〜2年糖質制限をしても腎機能に有意な悪影響は見られなかったという研究もあります。
心血管リスク
中性脂肪が下がり、HDL(善玉)コレステロールが上がるというポジティブな変化がある一方で、LDL(悪玉)コレステロールが増えるという報告もあります。
食材の選び方によっては、動脈硬化などのリスクにつながる可能性があります。
リバウンドのリスクと防ぐコツ
糖質制限をやめたあとに一気に体重が戻る“リバウンド”も大きな課題です。
糖質を再び摂るようになると、体が水分とグリコーゲンをため込み、一時的に体重が増加します。
さらに、ダイエット中に下がった基礎代謝や食欲ホルモンの影響で、過食しやすい体質になることもあります。
リバウンドを防ぐには:
- 徐々に糖質量を戻す「リバースダイエット」方式をとる(後述)
- タンパク質や食物繊維をしっかり摂る
- 食事記録や体重管理を続ける
- 「短期集中」より「生活習慣の改善」を意識する
リバースダイエットのやり方とは?
「リバースダイエット」とは、ダイエット終了後に糖質やカロリーを一気に元に戻さず、段階的に増やしていく方法です。急激に通常の食生活へ戻してしまうと、脂肪がつきやすくなるだけでなく、体が「飢餓状態からの反動」として脂肪を溜め込みやすくなってしまいます。
例えば、以下のように進めるのが一般的です:
- 1日あたりの糖質量を、1〜2週間ごとに10〜20gずつ増やす(例:1日50g→60g→75g→90g…と調整)
- 増やす際は、質の良い糖質(玄米、全粒粉パン、野菜、果物など)から選ぶ
- タンパク質や脂質の摂取量は維持しながら、筋トレや運動を続けると代謝の低下を防ぎやすい

この方法により、基礎代謝の低下を抑えつつ、ホルモンバランスも安定させながら元の食生活に戻していくことが可能です。リバウンドしにくい体質づくりのためにも、リバースダイエットは非常に有効とされています。
まとめ:正しく知って、賢く取り入れよう
糖質制限ダイエットは、正しく行えば効果の高い方法です。
特に短期的には体重減少や血糖値の改善などが期待できます。
一方で、長期間続けることで栄養バランスが崩れたり、ホルモンや腎機能への影響が出るリスクもあるため、無理のない範囲で取り入れることが重要です。
「糖質は悪」ではなく、「質の良い糖質を、適量とる」ことが美容と健康を守るポイントです。
体調と相談しながら、自分に合った方法を見つけていきましょう。

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参考文献
- Naude CE, et al. (2014). Low carbohydrate versus balanced carbohydrate diets for reducing weight and cardiovascular risk: a systematic review and meta-analysis. Cochrane Database Syst Rev.
- Hu T, et al. (2012). Effects of low-carbohydrate diets versus low-fat diets on metabolic risk factors: a meta-analysis. Am J Epidemiol.
- Tay J, et al. (2015). Comparison of low- and high-carbohydrate diets for type 2 diabetes management: a randomized trial. Am J Clin Nutr.
- Mavropoulos JC, et al. (2005). Low-carbohydrate diet on polycystic ovary syndrome: a pilot study. Nutr Metab (Lond).
- Friedman AN, et al. (2012). Low-carbohydrate high-protein vs low-fat diets on the kidney. Clin J Am Soc Nephrol.