不安障害に効く音楽療法とは。科学的なデータをもとに音楽の力を解説!

健康の科学

こんにちは。薬剤師のともです。
今回は「音楽の持つ力の特集、第4弾」です。

「いつも不安で落ち着かない」
「急に涙が出たり、気分が沈んで何も手につかない」——もし、そんな気持ちを一人で抱えているなら、この記事はあなたの助けになるかもしれません。

本記事は、うつ病や不安障害など“気分障害”に対して、音楽がどんなふうに作用するのかを、最新の科学的エビデンスと共にわかりやすく紹介します。

音楽は、あなたの気分を“やさしく支えてくれる処方箋”になる可能性があるんです。

このブログ記事を読むメリット

  • 音楽が不安やうつなどの気分障害にどのように働きかけるのか分かる
  • 自宅でできる“感情ケアとしての音楽の取り入れ方”が学べる

なぜ音楽は「気分」に効くのか?

◎感情と音楽の“共鳴”が起きる

音楽は、脳の「内側前頭前野」や「扁桃体」など、感情処理に関与する領域を直接刺激します。

これにより、悲しみや恐れ、孤独感といったネガティブな感情に寄り添い、気持ちの浄化(エモーショナル・レギュレーション)を促す作用があると考えられています。

NeuroImage誌(2020)の研究では、音楽を聴いたときの脳の感情ネットワークの活動が、感情の安定と密接に関連していることが示されています。

◎自分の感情を“言語化せずに”感じられる

気分障害のある人は「自分の気持ちがうまく言葉にできない」ことがあります。
でも音楽は、言語を使わずに感情とつながることができます
それが、カウンセリングや薬物治療では補いきれない、音楽ならではの価値です。


科学が証明する「音楽で気分が改善する」エビデンス

◎PLOS ONEに掲載された分析(Fusar-Poliら, 2020)

22件の臨床研究を対象とした分析によると、音楽介入を受けた若年成人では、対照群と比較して明確な抑うつ症状の改善が見られました

◎音楽療法は不安軽減にも有効

Cochraneのレビューでは、音楽療法を通常の治療(薬物療法やカウンセリング)に併用したグループが、不安スコアで有意な低下を示したと報告。

Gold et al.(2017)の分析では、音楽療法は特に「情緒の気づき」や「気分の切り替え」が困難な人に有効だとされています。

◎情動処理の改善が長期的な回復につながる

音楽療法を数週間継続した群では、単なる一時的な気分改善だけでなく、気分障害の慢性的傾向が低下したという追跡調査もあります(Aalbers et al., 2017)。

どんな音楽が「気分障害」に効果的か?

気分を整える音楽には、リラックスや睡眠とはまた違った選び方の視点があります。

◎“自分の感情にフィットする曲”が一番効果的

  • 無理に明るい曲を聴くよりも、「いまの気持ちに寄り添ってくれる音楽」が心を解放する
  • 共感系の歌詞」や「ゆるやかに哀しみを受容する曲調」が情動調整に向く

例:クラシック音楽のアダージョ(遅いテンポの楽章)、ジャズのバラード、ポストロックやアンビエントの浮遊感ある楽曲

◎歌詞の有無は好みと目的で使い分け

  • 自己投影したい時は歌詞あり(例:弾き語り系、邦楽バラード)
  • 無音状態が不安な人には、音が連続するインストゥルメンタル音楽が安心感を与える

自宅でできる「感情ケア」としての音楽の取り入れ方

◎“聴く”以外の音楽体験も効果的

  • 鼻歌やハミング:横隔膜を動かすことで自律神経が整う
  • リズムに合わせて手拍子や揺れる:身体感覚とつなげることで情動安定が起きやすい

◎気分ごとに“プレイリスト”を作る

  • 「落ち込んでいるとき」用
  • 「前を向きたいとき」用
  • 「ただ静かに癒されたいとき」用

気分障害の回復では、“自分の状態に気づく”ことがとても重要。
プレイリストを分けることで、自分の心の位置を確認する手がかりになります。


音楽は“感情のセラピスト”になりうる

僕は薬剤師として、薬を使うべき場面・使わなくていい場面の両方を見てきました。

不安や落ち込みがつらいとき、どうか音楽を「薬」として使ってください。

それは逃げでも、甘えでもありません。

音楽はあなたの気持ちを代弁し、整理し、やさしく包んでくれる存在です

もしあなたの気持ちが、ほんの少しでも軽くなったなら、それは“音楽があなたに効いた証拠”だと、僕は思います。

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参考文献

  1. Fusar-Poli, L., Bieleninik, Ł., Brondino, N., Chen, X. J., & Gold, C. (2020). The effect of music therapy on depressive symptoms in adolescents and young adults: A systematic review and meta-analysis. Frontiers in Psychology, 11, 578659.
  2. Aalbers, S., Fusar-Poli, L., Freeman, R. E., Spreen, M., Ket, J. C. F., Vink, A. C., … & Gold, C. (2017). Music therapy for depression. Cochrane Database of Systematic Reviews, 2017(11), CD004517.
  3. Gold, C., Mössler, K., Grocke, D., Heldal, T. O., Tjemsland, L., Aarre, T., & Aalberg, A. (2017). Individual music therapy for depression: randomised controlled trial. The British Journal of Psychiatry, 209(1), 68–73.
  4. Koelsch, S., et al. (2020). Emotion and music: fMRI evidence for the involvement of the amygdala and mPFC. NeuroImage, 207, 116354.
  5. Huron, D. (2006). Sweet Anticipation: Music and the Psychology of Expectation. MIT Press.
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