その不調、もしかして“うつ”?“五月病”?——違いを知って正しく対処しよう

健康の科学

こんにちは、薬剤師のともです。

新年度が始まり、春の訪れとともに気分も前向きになりたいはずなのに、「なんだかやる気が出ない」「朝起きるのがつらい」「仕事に行きたくない」
——そんな気分になっていませんか?

もしかすると、それは「五月病」かもしれません。あるいは「うつ病」のサインかもしれません。

この記事では、混同されがちな「うつ病」と「五月病」の違いについて、科学的根拠をもとにわかりやすく解説します。

症状を知り、早めに対処することが、その後の経過をよくするうえで重要です。
うつ病が疑われる方のチェックリストもご用意していますので、ぜひご活用ください。

うつ病を患った薬剤師として伝えたいことは、日頃の精神状態を振り返る機会の重要性です。
この記事がそのきっかけになれば嬉しいです。

この記事でわかること

  • 「五月病」と「うつ病」は何が違うのか?
  • 五月病の主な原因と特徴
  • うつ病の診断基準とリスク因子
  • 自分や大切な人を守るために、どう見分けてどう対応するか?

「五月病」とは何か?——正式な病名ではないけれど…

医学的な定義はない「五月病」

「五月病」という言葉は、実は医学的な正式名称ではありません。

日本でよく使われる俗称で、特に新社会人や大学新入生が、4月の新生活スタート後に一段落つく5月ごろに、強い倦怠感や無気力、軽度の不安感を訴えることが多いために名付けられたものです。

主な症状

  • 朝起きるのがつらい
  • 気分が落ち込む
  • 会社や学校に行きたくない
  • 食欲がない、または過食
  • 集中力の低下
  • 頭痛や胃の不快感

◆ 五月病は「適応障害」の一種

精神科医の多くは、五月病の正体は「適応障害」であると指摘しています。これは、環境変化に適応できずに、心理的・身体的な不調が現れる状態です。

「うつ病」とは何か?——心の風邪と呼ばれる病気の実態

◆ うつ病の診断基準(DSM-5)

アメリカ精神医学会が定める診断基準(DSM-5)によると、うつ病(大うつ病性障害)は、以下の9つの症状のうち5つ以上が、2週間以上ほぼ毎日続く場合に診断されます。

  • 抑うつ気分
  • 興味・喜びの喪失
  • 食欲または体重の変化
  • 不眠または過眠
  • 精神運動の焦燥または制止
  • 疲労感、気力の減退
  • 自責の念、無価値感
  • 集中困難、決断力の低下
  • 死についての反復思考、希死念慮

◆ 神経伝達物質の異常と脳機能

うつ病は「気の持ちよう」ではありません。脳内のセロトニンやノルアドレナリンといった神経伝達物質のバランスが乱れることで引き起こされる医学的な病気です。

「五月病」と「うつ病」の違いとは?

項目五月病うつ病
定義医学的定義なし(俗称)医学的に定義された疾患
主な原因新生活への適応ストレス神経伝達物質の異常、ストレスなど
発症時期4〜5月に多い季節を問わず
経過一過性が多く、自然回復も放置すると重症化・長期化
対処法休息・環境調整・相談医療機関での治療が必要

科学的根拠が示す「五月病」から「うつ病」への移行リスク

◆ 若年層に多い“潜在的うつ病”

2022年の日本国内調査では、社会人の3割以上が5月に不調を感じたことがあると回答し、その中には「後にうつ病と診断された」人もいました。

◆ 海外研究:「春季うつ」の存在

うつ病の一種「季節性情動障害(SAD)」では、春先に気分が不安定になる例もあります。

どう見分ける?自分の心の状態をチェックしてみよう

(WHO-5 精神的健康状態指数より)

以下の5つの項目について、過去2週間をふりかえって、どれくらい当てはまるかをチェックしてみましょう。

それぞれについて、以下の6段階で評価します

  • 5点:いつもそうだった
  • 4点:ほとんどいつもそうだった
  • 3点:時々そうだった
  • 2点:あまりそうではなかった
  • 1点:ほとんどそうではなかった
  • 0点:まったくそうではなかった

合計点が13点未満の場合、うつ状態の可能性があるため、専門機関への相談をおすすめします。

五月病とうまく付き合うためのヒント

  • 無理しない、頑張りすぎない「完璧にこなさなきゃ」と思わず、自分をいたわる。
  • 生活リズムを整える: 毎朝決まった時間に起きて朝日を浴びる、朝食をとる。
  • 誰かに話す 家族や職場の人、カウンセラーなど信頼できる人に話す。

おわりに:うつを正しく理解することが、第一歩

「うつ病」と「五月病」、似ているようで根本は異なるものです。

ただし、五月病のような軽い不調も、放置すればうつ病へと進行してしまうリスクがあります

「たかが五月病」と思わず、自分や大切な人の変化に気づいたら、早めにケアすることが何より大切です。

必要なときには、専門家の手を借りる勇気を持ちましょう。

僕のうつ病を患った経験上、早期発見と対処が一番大事だと考えます。

この記事が、あなたの心の平穏につながるものになりますように。

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参考文献・引用元

  1. American Psychiatric Association. DSM-5 (2013)
  2. Drevets WC et al. (2008). Brain Struct Funct
  3. Rosenthal NE et al. (1984). Arch Gen Psychiatry
  4. 厚生労働省「こころの耳」 https://kokoro.mhlw.go.jp/
  5. HRプロ https://www.hrpro.co.jp/
  6. Tokyomentalhealth.com “Understanding May Disease”
  7. Mistlberger RE, Skene DJ. (2004). Neurobiology of Sleep and Circadian Rhythms
  8. WHO-5 Well-Being Index https://www.who-5.org/
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