SNSやYouTubeは子どもの非認知能力にどう影響する?科学が示す意外な事実と親ができる対策とは

子育ての科学

はじめに

こんにちは、薬剤師ともです。
スマホやタブレットが当たり前となった今、子どもたちはYouTubeやTikTok、Instagramなどに自然と触れるようになっています。
しかし、こうしたメディアの利用が「非認知能力(自己コントロール力・共感性など)」にどんな影響を与えているかについては、まだあまり知られていません。
この記事では、最新の科学的研究をもとに、SNS・動画サイトと非認知能力の関係をわかりやすく解説します。

このブログ記事を読むメリット

  1. 最新の科学的エビデンスをもとに、SNSや動画サイトが子どもの心にどう影響するかがわかる
  2. 共感性や自己コントロール力を伸ばすための具体的な家庭対応策が学べる
  3. TikTok・YouTube・Instagram・X(旧Twitter)それぞれの特徴と注意点が整理されている
  4. 「親として何ができるか」が明確になるので、不安を行動に変えられる

非認知能力とは?

非認知能力とは、テストで測れる「知能(IQ)」とは異なり、人間の行動や感情、社会性を支える能力のことを指します。たとえば、

  • 自己コントロール力(我慢する力、感情の調整)
  • 共感性(相手の気持ちを理解し、寄り添う力)
  • やり抜く力(GRIT)や協調性

などが代表的です。
これらは幼児期から育まれ、将来の人間関係、学業、就職、幸福感などにも影響します。

非認知能力について概説した記事はこちら ⇓


SNSやYouTubeなどのデジタルメディアが非認知能力に与える影響

SNSの使い方によって差が出る

近年の研究では、SNSを通じた交流が子どもたちの共感性や社会的スキルを育てる面もある一方で、受動的な閲覧(ただ見るだけ)が中心だと、自己肯定感が低下しやすくなることがわかっています。

【ポイント】

  • 投稿を「する側」になることで、自己表現や感情コントロールが鍛えられる
  • 「見るだけ」だと、他人と自分を比べて落ち込みやすくなる

SNSと共感性への影響

Instagramでは「見た目」中心の投稿が多いため、見た目への比較が生じやすく、自尊感情や共感性の低下と関係する可能性があります。TikTokでは「短時間で刺激的」な動画が多く、一貫した集中力の低下や情緒不安定につながるケースも報告されています。

X(旧Twitter)はテキストベースの情報が多く、情報のインプット量が多くなることで、逆に思考の浅さや衝動的反応が起こりやすくなるとの指摘もあります。

利用頻度・内容と非認知能力の“意外な関係”とは?

SNSや動画視聴の「量(頻度・時間)」と「質(どんな内容を見るか)」は、非認知能力の発達と密接に関係していることが近年の研究で明らかになってきました。

たとえば、インドで行われた大規模調査では、1日に1時間以内のメディア接触時間の子どもは、共感性・自己主張・協調性・自己制御力のすべてでスコアが高かったと報告されています。
逆に2時間以上のスクリーンタイムを持つ子どもは、これらのスキルが顕著に低下していました

また、SNSや動画の「受動的な視聴」(ただ見ているだけ)では、以下のようなリスクが高まると考えられています:

  • 他人と自分を比較して自己肯定感が下がる
  • 短時間で強い刺激に慣れ、集中力や忍耐力が育ちにくくなる
  • コメント欄などでの誹謗中傷や過激な言葉に触れることで、共感性が鈍くなる

一方、「能動的な利用」にはポジティブな側面も。
たとえば、動画作成やSNSでのやりとりを通じて、自己表現・言語能力・感情のやりとりの経験値が高まるケースもあります。

つまり、非認知能力を育てるうえで大切なのは「見せるかどうか」ではなく、“どれくらい・どんなふうに使っているか”という視点です。


YouTubeの影響:メリットとリスク

教育的コンテンツはプラスに働く

良質な教育動画は、子どもの言語力や社会性を伸ばす可能性があるとされています。親子で一緒に視聴して会話をすることで、理解や共感の力も育ちます。

長時間の視聴はリスクになる

しかし、長時間・高頻度での視聴は注意が必要です。韓国の縦断研究では、視聴時間が長いほど、情緒的問題行動(怒りっぽい、不安、落ち着きのなさ)が増える傾向があると報告されています。
特に「幼い時期から習慣的に見ていた子ども」にその傾向が強く見られました。

SNS・動画の“使い方”と非認知能力の関係性をデータで見る

非認知能力、とくに「共感性」や「自己コントロール力」は、SNSや動画の使用パターンによって育まれることもあれば、逆に損なわれることもあります。

具体的には、以下のような傾向が複数の研究で示されています。

使用状況非認知能力への影響
1日1時間未満の視聴 + 教育的コンテンツ中心◎ 共感性・協調性・自己抑制が高い
1日2時間以上の受動的視聴(YouTubeやTikTok)× 注意力・自己制御力が低下しやすい
SNSでの受動的閲覧中心(スクロールだけ)× 自己肯定感・共感性が低下しやすい
SNSでの能動的交流(コメント・投稿など)○ 言語表現力・社会性が向上する傾向

特に幼児~小学生においては、「どのくらい見るか」と同時に、「誰と見るか」「見た後どう行動するか」が重要だとされています。


このように、利用の“量と質”が非認知能力の発達に直結することを、保護者が意識するだけでも、子どもにとって健全なメディア環境が整いやすくなります。


自己コントロール力とメディア利用の関係

自己コントロールとは何か?

自己コントロールとは、自分の感情や行動をコントロールする力です。たとえば「あと5分で終わり」と決めたら、それを守れるかどうか。

TikTokやYouTubeのような、次々に動画が流れてくる仕組みは「やめどき」が見つけにくく、自己コントロール力が未熟な子どもにとって依存しやすい特徴があります。

研究が示す関連性

ある研究では、TikTokの長時間使用は自分で時間をコントロールする力(時間管理能力)の低下と関連していました。
また、スマホ使用時間が長い子どもほど、自己コントロール力が低く、感情が不安定になる傾向が示されています。


SNS・動画サイトの「良い使い方」vs「悪い使い方」

良い使い方の例:

  • 家族と一緒に視聴し、感想を話し合う
  • 教育的なチャンネルや知育アニメを選ぶ
  • 視聴時間をタイマーなどで管理する
  • 子どもが自分でコンテンツを作る(創作投稿)経験をさせる

悪い使い方の例:

  • 食事中や寝る直前まで視聴する
  • 何時間も一人で視聴し続ける
  • 暴力的、過度に刺激的な動画ばかり視聴する
  • SNSで「いいね」やフォロワー数ばかり気にする

家庭でできる対策:非認知能力を守る・育てる

親子でルールを決める

ルールは「親が決めて押し付ける」のではなく、子どもと一緒に決めることで納得感が生まれ、自己決定感も育まれます。

例:

  • YouTubeは1日30分まで、見る前に内容を伝える
  • SNSは親が見守れる範囲で使う

スクリーン以外の時間を大切にする

  • 外遊びや読書、ボードゲームなどリアルな経験を意識的に増やす
  • 家族の中で「画面を見ない時間帯(たとえば食事中)」を設ける

親のスマホ利用も見直す

子どもは親の姿をよく見ています。「ながらスマホ」を減らし、会話やアイコンタクトを意識するだけでも、子どもの共感性は育ちやすくなります。


おわりに:親の関わりが未来を変える

SNSやYouTubeは、もはや子どもにとって「当たり前の世界」です。
完全に排除するのではなく、どう付き合うかを親子で考えることが、非認知能力を育てるカギになります。

子どもの未来のために、今、できることから始めましょう。

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